2014年09月05日

ジュズダマ

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久しぶりにジュズダマを見つけた。子供のころは身近に普通にあったが、最近ではめったに出会わない。この固い実は、糸を通して首飾りにしたり袋に詰めてお手玉にしたりと、主に女の子の遊び道具だった。私もたくさん集めた覚えがあるが、それは姉とかに頼まれたりしたのか、それとも茶色や黒、灰色と色とりどりで、それがガラス質の光沢を帯びて、男の子にとっても魅力的だったからか。

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若い実があった。2本、ひげのように伸びているのは雌しべの先だろう。細かな毛がびっしりで、それで風に漂う花粉を捉えようとする、よくある風媒花の柱頭だ。その下の緑の玉が子房とすると、これはむき出しの雌しべだけの花ということになる。しかしそれにしては柱頭の生え際がごちゃごちゃしていてなんだか変だ。

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まだやわらかい緑の皮を切り取って中を覗いてみた。柱頭は短い花柱につながり、その下が白い半透明の玉になっていて、つまりこれが本当の子房だった。それ以外に細い棒状のものが2本、糸状のものが1本並んでいた。なんとこの棒状のものは退化し結実しない雌花、糸状のものは雄花の穂の軸だった。つまりこれはいくつもの花の集まった花序で、固い殻は花序の付け根の葉、つまり総苞に相当するものだった。苞葉が発達して壺のような形になり花序の根元をしっかり包み込んでいたのだ。イネ科の花は基本形からずいぶん変形しているが、その中でもジュズダマはさらに変わっているのだった。

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数日もすると柱頭は枯れて、入れ替わるように雄花の穂が伸びだしてくる。そんな状態のものの殻を切って片側を取り除いてみた。雄花の量からするとこの軸はずいぶん細い。まあ固い殻でしっかり包み込まれているから問題ないのだろう。退化雌花が痕跡化するどころかそれなりに成長しているのが不思議だ。何らかの役割を果たしているのかもしれない。

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さて、元に戻って外側から観察してみる。柱頭の糸は普通は2本だが中には4本だったり1本だけのものもある。横から雄しべの穂が伸びだして来ると柱頭は枯れ始める。

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柱頭はすっかり茶色の細糸になって枯れ落ちるばかりだ。雄花の穂はイネ科らしく小穂の集まったもので、各小穂には2個づつ雄花が入っている。小穂の一番外側の葉(包穎)に隙間ができて、そこから細長い葯が垂れ下がっている。風媒花だから花らしい装飾などない。それでも細い花糸に吊るされた明るい黄色の小片が、わずかな風にもいっせいに揺れ動いているのは、繊細で儚げで思わず目を奪われる。

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葯の先端で横に穴が開いて、そこから花粉が出てくる。すぐに飛び散ってしまうが、わずかに出残った花粉が見えた。

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雄花の下の葉の上に花粉がこぼれ落ちている。葯はじきに茶色く枯れ、そのうち雄花の穂も根元から切れて落ちる。その頃には苞葉はすっかり固くなり頑丈な壺になって、中の果実をしっかり守っている。

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ところで葉を触って、ずいぶんザラザラなのに驚いた。拡大してみると縁は鋸のようになっている。子供の頃よくススキで手を切ったりしたが、こちらの方がもっと痛そうだ。この棘は葉の表面にもびっしり並んでいてすべて先の方に向かって傾いている。だから指でつまむと元の方へは全く滑らない。こうしたものは草食動物に対する防御だろうが、それ以外にも葉がこすれあって痛むのを防ぐといった機能もあるような気がする。

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ジュズダマは熱帯アジア原産で稲作に伴って渡来した史前帰化植物と言われている。このあたりでは多年草だが東京あたりでは冬は枯れた。もともとは食用だったということだが、いったいこの固い殻をどうやって取り除いたのだろう。いろいろ穀物はあるがこれほど固く守られているものはまずないと思う。なおハトムギがこの変種で殻はこれほど固くないという。ハトの名はハトが食べるからだそうで、ジュズダマは無理だがハトムギなら砂嚢で潰せるということだろうか。

ジュズダマを見つけたのは丘陵地の農道の脇だった。本来ジュズダマは水辺に生えるが、ここは崖下で常時湿り気があるのでこじんまりと群落ができたようだ。8月初め、1m以上も高くなって節々から花穂を出していた。秋になったらたくさん実が取れるなと思っていたのだが、つい先日、行ってみたら見事に草刈りされてしまっていた。やれやれ、ハカマカズラと同じことになってしまった。草刈は昔なら鎌でやるしかなかったから必要最小限だった。しかし今はエンジン付きの草払い機だ。届くところまで一気に刈ってしまう。それが里近くから多くの昔からの草木が消えてしまった原因の一つになっているかと思う。
posted by 夜泣石 at 09:22 | Comment(0) | 花草木 | 更新情報をチェックする
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